東工大窯業同窓会見学記

東工大窯業同窓会見学記               2005.11.4

「陶芸−大先輩である巨匠の窯元を訪ねて」 このタイトルで窯業同窓会が企画した一日バスツアー見学会は、秋に入った10月29日に行われました。民芸の父と呼ばれるこれも大先輩である濱田庄司氏の下で作陶を学び、“縄文象嵌”を編み出した人間国宝「島岡達三氏」並びに東工大百年記念館に常設展示されている重鎮の「田山精一氏」、今新進気鋭の「村田浩氏」、益子・笠間のお三方の窯元を先輩自らご案内していただけるまたとない機会でした。
 総計42名のメンバーが新宿を出発したのが、早朝の8時でした。早速、山内同窓会会長の挨拶と前会長の鈴木先生からお話をいただきました。次いで、昨年開催された「G.ワグネルが開いた近代日本陶芸・先端セラミックスの美・用・学の世界」特別展示・講演会の分厚い資料をはじめ、道家名誉教授並びに水谷特任教授の纏められた東工大窯業の陶芸に係る歴史・益子・人間国宝島岡達三氏に関する多くの資料が配布されました。しかも車中、水谷教授から皆さんに今回の見学会に係る懇切丁寧な内容のある又ユーモアのある事前レクチュアがビデオを見ながらありました。

 あっという間に11時前益子に到着し、直ちに島岡先生窯元に出向きました。既に田山先生・村田先生もおい出になっていました。島岡先生自ら、皆さんを作陶の現場にご案内戴き、縄文模様を生み出す“組み紐”と実際の作陶の状況、登り窯、並びに先生の作陶部屋を自らのご説明で詳しく拝見する事が出来ました。そして先生のお宅のお庭で、皆さんご一緒にお茶を戴きながら、記念写真を撮りました。
 

 

次いで、隣接の益子参考館に入り、島岡先生自ら、多くの濱田庄司氏の作品、収集品、内部施設のご説明をいただきました。いずれも国宝級のすばらしい作品の数々でした。

 次に、共販センターに向かい、和室大広間でお三方の先生方と昼食をとりました。食後、今回残念ながら窯元訪問できなかった村田先生から、きれいにカラー印刷された窯元写真と作品集リーフレットを戴き、詳細なご説明がありました。加えて、お三人の先生方を囲み、直接なかなかお聞き出来ないお話を聞く事が出来ました。“陶芸に上達するには、良い作品を見ることです”と言う島岡先生のお話が頭に残りました。
 次いで、益子メッセにある益子陶芸美術館を見学しました。現在の益子の隆盛を築き上げた二人の人間国宝、濱田庄司・島岡達三、そして佐久間藤太郎・木村一郎・村田元(村田浩さんのお父さん)・加守田章二各氏をはじめ益子ゆかり方々のすばらしい作品を拝見しました。

 14時20分益子に別れを告げ、笠間市の田山先生窯元に向かいました。先生から、すばらしい色彩を出す笠間焼のお話をお茶をいただきながらお伺いし、窯元の見学を行いました。次いで、5年前に完成した茨城県陶芸美術館に向かい、人間国宝松井康成の特別展、近現代日本陶芸の巨匠の作品(板谷波山等)、茨城県の笠間焼きの代表的な作家の作品(勿論、田山先生の作品も展示されている)等を鑑賞しました。松井康成の作品に皆さん圧倒されると共に、今一度ゆっくり訪問したいすばらしい美術館でした。

 夕刻も迫り、そのまま帰る事も考えましたが、せっかくの機会なので若干時間を延長し、暗闇の笠間稲荷を参拝し、予定より30分遅れの20時無事新宿に帰着しました。帰りの車中も往路同様、水谷先生から今日のフォローと共にビデオを見ながらの有益なお話がありました。一日中雨の予報に対し、殆ど雨らしい雨に遭遇せず、島岡人間国宝をはじめ、先輩諸氏のお話を拝聴できた事、窯元を先生方自らご案内していただいた事、加えてすばらしい作品をお土産に頂戴した事及びすばらしい陶芸の作品の数々を鑑賞できた事等、皆さん、どっぷり一日陶芸の世界にしたる事が出来たのではないかと考えています。
 今後我々同窓会の役割のひとつとして、東工大窯業の先輩諸氏が築き上げてこられたものを広く世の中に紹介する事も必要と考えています。近い将来趣向を変えて、又企画したいと考えています。 

(武 孝夫記)